夕焼けとほしぞら の書影

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夕焼けとほしぞら

人類が木星系にまで進出した200年後の未来。ガニメデ入植基地で暮らす人々の群像劇。

FORMAT
B6 / 小説・挿絵あり
FOCUS
SF、SNS、宇宙、青春
LINK
BOOTH

作品について

太陽系をめぐる場面

〽 楽しかったね もう帰らなきゃ
遠くで帰りを告げるサイレンが鳴って

河原で遊ぶ子どもたち カレーのにおい
飛び降りた後 揺れ続ける公園のブランコ

買い物袋をぶら下げて 踏切を渡っていく
自転車と各駅停車の音 一日の終わりのしるし

秋の空と高い雲 電線のシルエット
みんなさよならを言い合って
夕焼けの空が降ってきて ほしぞらに移り変わる

俺は布団に顔を押し付けてその歌声を聞いていた。良い声だった。火星と木星の間、なーんにもない宇宙空間に歌声が響いている夢を見ていた。夢ではなかった。息遣いが聞こえていた。

地球の歌だ。 夕焼けの空が降ってきて、星空に移り変わる。そんなもの、俺はパイロットになって地球に行くまでは一度も見たことがなかった。

『夕焼けとほしぞら』は、ガニメデ入植基地に暮らす人々の群像劇を描いたSF短編5本と、現代小説2本がセットになった短編小説集です。

200年前の地球で流行っていたSNSの全データを発見した少年たちが次々と新しい発見をしていく話、ガニメデで生活する男女の話、AIとイラストの話、 地球とガニメデを結ぶ運送業者の話…などなどがあります。

木星系に人類が進出するくらいの未来のSFではありますが、表紙のとおり雰囲気は昭和の懐かしさを重視しています。 宇宙に広がるSFと昭和・平成が調和した世界を表現しました。

制作メモ

一連の小説はとある創作系のSNSで連載していたものでした。そのSNSの内輪ネタとして盛り上がるということをターゲットにして、制作を進めました。 狙い通り、当時のSNSでは多くの人にこの小説を読んでもらうことができました。普段小説を読まないような人たちまで読んでくださって、 面白かったという感想をたくさんいただきました。

後に書籍化しようと思い立ち、内輪ネタの部分は全面的にリライトしました。するととたんに物語の奥行きがなくなり物足りなくなってしまったので、 絵を描く、創作をするというメンタルの話と当時ホットだったAIイラストの是非、といったことをテーマにしてストーリー展開を進めました。

私が一貫して大事にしているのは「非日常的なSF世界の中で日常的で我々が想像可能なキャラクターたちが生活をしていく」という前提です。 200年後、木星系に暮らす人々も「神絵師」と呼ばれるクリエイターに憧れをもち、彼らのように仕事をしたい、憧れの地球で暮らしてみたい。そう願います。

「次にやってくる地球人の入植者のためにガニメデの文化を発信するクリエイターを募集してるんだ。地球に行けるんだって!行き先は日本だよ!アルトサーバー発祥の地だよ!」

秋鹿はそう言って目を輝かせているが、頭痛のせいであまり理解ができない。文化交流?アルトサーバー発祥地?なんの話なんだ。

「地球なんて重力井戸の底に行ったら、ガニメデ生まれガニメデ育ちの俺たちなんか潰れちゃうよ」

そう反論するのが精一杯だった。今は何も考えたくない。ひたすら頭を締め付ける鈍い痛みに耐えている。

「でも、選ばれさえすれば地球でずっと絵を描いていられるんだよ?すごくない!?」

秋鹿は子供みたいに無邪気な笑顔で布団の上に馬乗りになってそう叫んでくる。実際、秋鹿は高校の時のジャージを未だに着てるし本当に子供みたいだ。俺は秋鹿の体重に潰されてモチョチョの中身が弾けそう。

「ね、二人で地球に行こうよ!Y2Kの爆心地で、私達二人で絵を描いて地球人たちにガニメデのことを教えてやるんだ!!絶対楽しいよ!!」

けれども、常に別れが存在するのは200年後の世界も同じです。

そのメッセージを最後に、秋鹿はアルトサーバーから姿を消した。原子力イオンエンジンをふかしてガニメデ周回軌道からホーマン遷移軌道に移り始めた宇宙船は、 黒い空を見上げてもどこにいるのかさっぱりわからなかったし、昨今は公共放送でもいちいちシャトルの発着を中継することはしなくなっていた。

創作をめぐる場面

その他、二本の現代を舞台にした青春小説もあります。こちらはSF要素はありませんが登場人物の感情の動き、話すセリフなどにリアリティを求めて制作を進めました。 この人が実在したらどんなことを言うだろうか、どういった行動を取るだろうかと生々しい人物像を想像しながら書いています。ただ、それだけだと 自分の体験や知識のみに依存することになるので、実在する知人や著名人の発言や性格を分析しつつ、断片的に盛り込むこともあります。

ファミレスの挿絵

本屋の挿絵