有理まこと 雑記ブログ

完売のお礼と創作を構成する要素

BOOTHにて販売していた「猫の校舎」ですが、予備を除いた予定数分、完売しました。買っていただいた方、本当にありがとうございました。

同じことをあちこちで言っているのですが、本を作るまでは私の本が売れるとは思っていませんでした。知り合いの方が数冊買ってくれるのを期待していて、あとは知らない人が1〜2冊買ってくれれば万々歳。初期発注分は一生かかってもいいから売り切れればいいや、と思っていました。

ただ、完成度が低いから売れないと思っていたわけではありません。個人的には様々なこだわりを盛り込んだ上で私自身でも手元に置いておきたいと思えるものを作ったつもりですが、こだわりというのは常に自己満足になりがちなので他の人にどう評価されるかは完全に未知数です。また、「なるべく多くの人にとって価値あるものを作りたい」という意図があったわけではなく、むしろ数%の感覚を共有できる人に深く刺さってほしいというつもりでも作りました。

そういった事があって、売れないだろう(ほそぼそと売っていって共感してくれる人を見つけていくしか無いだろう)と思っていたのですが、ここまで売れたのはしつこいですが私にはあまりにも予想外で困惑するのと嬉しいのとありがたいのと、全部が混ざった気持ちで居ます。

複雑な感情の中でただ一つ確実に言えるのが「次の作品を作るための強いモチベーションにつながった」ということです。

次回作は2023年5月21日、文学フリマ 東京36で販売する予定の「ライク・ア・ムービー」です。こちらも「猫の校舎」と同じく私にとっては思い入れが深い作品です。小説そのものは最後まで書き進めてあり、もう一度読み直して修正し、挿絵を加えたあとで製本する予定です。

じつはいずれの小説もWeb上では公開していた時期があるので、読んでくれた方も一定数居ると思います(2年間載せてて50PV程度なのでほぼいないと思いますが…)。物語の流れは変えず、わかりにくい表現のみを変えているので作品の解釈は変わっておらず、より読みやすくなっているという改善がありますのですでに読んだ方もぜひ買っていただけたらありがたいです。

さて、今日は私の創作を開始したきっかけなどについて書いてみようと思います。

よく、創作を趣味や仕事として行っている人たちに「なぜ創作を始めようと思ったのか」という質問をします。皆さん、きっかけは様々で「よくある理由」みたいに頻出するものはなく、聞いていてとても楽しいのです。というわけで私もそれを伝えたら面白いかもしれないと思って書きます。自分語りが好きだからという背景もあります。

私が創作を初めたのは、兄の影響でした。5歳年の離れた兄がおり、小学校低学年のころの私にかわぐちかいじ著「沈黙の艦隊」を読ませたのでした。日本国海上自衛隊にはじめて原子力潜水艦が配備され、その潜水艦が独立国家を名乗り自衛隊の指揮を離れて独断で行動し始めるというストーリーです。今考えると中学生の兄が読むにも小学生の私に読ませるにも、ものすごく渋いチョイスだったと思います。しかし私は作中に登場する潜水艦や護衛艦、戦闘機などに一瞬で心を奪われました。

さらに元をたどると、私が機械を好きだったのは農家であったことが関係しています。両親は畑に行く時にはまだ就学前だった私を連れて行っていましたが、そこで私はトラクターに乗せてもらったり送水ポンプを触ったり耕運機をいじったりなどさせてもらっていていました。機械がどのような仕組みで動いているのか気になり、ドライバーがあれば家にある機械全部を分解して怒られていました。

兄が「沈黙の艦隊」を読み、戦車や戦闘機、潜水艦の絵を描いていたのでそれを真似したのが私の創作人生の始まりでした。そこから小学生の頃は学級新聞に漫画を書いて褒められたりなどといったことを経由して、中学、高校、大学の1⃣年次まではインターネットとお絵かき掲示板にハマります。

文章の方はどうでしょうか。これも始まりはインターネットでした。当時はまだインターネット黎明期の時代。接続プロバイダーを契約すると自分のホームページを公開するためのサーバースペースが与えられていました。そこに私が描いたイラストや書いた文章を載せていたのが始まりです。そういった活動は大学生まで続きましたが、一旦そこでストップしてしまいます。

本格的に創作活動を再開させたのはここ1年くらいのことです。10年以上のブランクがあったためにその間は成長が完全に止まっていることに加え、私が以前書いていた文章というのは通常の個人ブログによくあるような製品レビューとかそういったものですので、これもあまり創作とはいい難い内容でした。だから、絵も文章もほとんどゼロから再スタートだった、と個人的には思っています。

特に同人活動については、購入する側としてもなにか行動を起こしたことが無く、本当に右も左も分からない状況から初めています。

というわけで私の創作の根底には「機械」、そしてその外堀を埋める「SF」があります。現時点で発表している創作物を見ていただいてもあまり機械もSFも感じさせないな…とはおそらく皆さん思うのではないかと思いますが、これは私のSFや機械に対する愛が強すぎるがゆえになかなか一歩を踏み出せないことが背景にあります。次回作(ライク・ア・ムービー)から徐々にそういった描写を増やし、その次の作品で爆発させようと画策しています。

その他の私の創作の要素としては、人の生死と夢があります。

私の人生は何かと親しい人が若くして命を落としてしまう経験が多かったです。その度、私はいろいろな事を考えました。何故いい人ばかりが死ぬのだろうか。何故私が死ななかったのだろうか。何故、あの人が死んでも月曜日になれば朝のニュースが始まり、エンタメ情報が流れるのだろうか。何故、あの人が居なくても学校や会社に行かなくてはならないのだろうか。そんなことをよく考えます。

当然ながら、人は死にます。生き物だからそれは仕方がない。そして、たった一人の人が死んだところで世の中はあまり変わりません。ものすごい功績を残した著名人が亡くなっても、せいぜい1ヶ月もすればみんなそれを忘れます。人間の死というのは社会全体を俯瞰すると、そのくらいの変化しか無いように思えます。

ただ、死ななかった人が人の死に際してその後どう生きていくか、という部分には大きな影響を与えると思っています。私は人の死に関してなにか行動を起こそうとしましたし、そして自分の考えを伝えたくて仕方がなかった時期が何度もありました。それで教訓を伝えたいとかいう大げさな気持ちがあったわけではなく、単に自分の考えを表現したかったのです。そして、その試みは今も続いています。

最後の構成要素は夢です。夢には不思議な力があります。サルバドール・ダリは夢から着想を得た絵を沢山描いていましたし、夏目漱石の著作には「夢十夜」がありますし、湯川英樹はキャッチボールをしている夢からπ中間子を発想したという逸話があります。夢は発想力を飛躍させるために有用な手段だと私は考えています。

皆さんも一度はまるで映画のような壮大なストーリーの夢を見たことがあるのではないでしょうか?私はそういったときに夢の内容を忘れずにメモしておきます。そしていつか誰かに伝えたいなと考えています。夢に着想を得た小説を作るのはそんなシンプルな気持ちが動機になっています。

というわけで、私の創作の原点は「沈黙の艦隊」と農業機械。そこから発展したSFと人の生死と夢。そういうあたりに落ち着いているわけです。

もし創作をしている皆さんがこの記事を見ていたら、ぜひ皆さんの創作の原点もいつか聞かせて下さい。